Webブラウザの操作を自動化できるツールは多数登場しています。なかでも、Webアプリのテストツールとして知られる「Selenium」は、オープンソースの無料で利用できるフレームワークとして多くの人に長く利用されているツールです。
一方で、「RPA」などの定型業務を効率化できるツールによって、テストだけでなく業務全般を自動化する事例も増加傾向にあります。
この記事では、「Selenium」と「RPA」は何が違うのか、それぞれの特徴や違い、メリット・デメリットについて解説します。
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1.Seleniumとは
Seleniumとは、Webブラウザの操作を自動化するオープンソースのソフトウェアです。WebアプリケーションのUIテストやJacaScriptのテスト自動化を主な目的として開発されましたが、近年ではWebサイトからの情報収集などにも活用されています。
Seleniumはテキストの入力やドロップダウン・チェックボックスの選択、リンクのクリックと言った基本的な動作を自動化できるのが特徴です。プログラミング言語を用いて操作するため、高度な自動化処理を実行できます。
ブラウザの種類を問わずさまざまなWebアプリケーションに対応でき、幅広いプラットフォーム・プログラミング言語に対応しているのもポイントです。多くのコードが公開されており、世界中の開発者に利用されてきた実績があります。
2.Seleniumの種類
オープンソースとして提供されているSeleniumには、複数のコンポーネントが用意されています。具体的なSeleniumの種類は以下のとおりです。
- Selenium IDE
- Selenium WebDriver
- Selenium Grid
ここでは、Seleniumの種類についてそれぞれ解説します。
2‐1.Selenium IDE
Selenium IDEは、Webブラウザの操作を直接記録して、テストスクリプトを自動生成するツールです。機能テストにおけるデバッグ作業におすすめで、記録や編集も容易に行えます。
ブラウザの拡張機能として用意されており、「Google Chrome」「Microsoft Edge」などで動作するのもポイントです。プログラミングの知識がなくても、簡単にテストスクリプトを作成できるものの、複雑な操作の自動化には向いていません。
2-2.Selenium WebDriver
Selenium WebDriverは、プログラミング言語を用いてWebブラウザを操作するツールです。2009年にGoogleが開発し、2018年にはW3Cの推奨となりました。ブラウザの拡張機能やOSの機能を利用するため、Selenium RCのようなセキュリティ制限を受けません。
W3C推奨で業界標準として認められており、信頼性が高いのも魅力です。プログラミングの知識は必要ですが、主要なブラウザやプログラミング言語に対応しており、Selenium IDEよりも複雑な操作を行えます。
2-3.Selenium Grid
Selenium Gridは、複数のマシンで同時にテストを実行できるツールです。さまざまなOSやブラウザの組み合わせでテストを同時に行えるのが魅力で、異なる環境でのテストを効率的に進められます。
一元管理した複数の実行環境からテストを進められるなど、その性質から、テスト時間を短縮して短期間で動作確認をしたいシーンにもマッチします。
3.RPAとは
RPAとは、「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略称です。人間が行う定型的なパソコン操作を、ソフトウェアロボットに代行させる技術を指します。
近年では、ロボットによる業務の自動化を「業務のRPA化」と表現するシーンも見られます。
通常ではプログラミングなどの知識が求められるシーンでも、一部のRPAツールならGUIベースで視覚的に分かりやすく操作できるため、初心者でも自動化ツールを作成しやすいのが魅力です。
MM総研の調査(2022年)によると、RPAの導入率は年商50億以上の企業で45%、50億未満で12%と、大企業を中心に導入を進めているのが現状です。
出典元:MM総研「RPA国内利用動向調査 2022」
一方で、中小企業での導入件数も年々増加傾向にあります。人材や人手不足などの課題も背景にあり、今後もますますシェアは高まっていくとされています。
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4.SeleniumとRPAの違い
SeleniumとRPAは、どちらもWebブラウザの操作を自動化するツールですが、いくつかの違いがあります。
- 構築の難易度
- 運用のしやすさ
- 導入コスト
ここでは、SeleniumとRPAの違いについて解説します。
4-1.構築の難易度
SeleniumとRPAには構築難易度に違いがあり、一般的にベンダーが提供しているRPAツールの方が構築・操作しやすくなっています。
Seleniumは開発者向けのツール・ライブラリで、ある程度の専門知識を持っているユーザーが対象です。言い換えると、プログラミング知識が前提にあるため、ITスキルに自信のないユーザーにとって構築難易度は跳ね上がります。
一方で、RPAはプログラミングの知識がない一般人を対象としたツールがほとんどです。「画面を録画してその通りに操作する」「マウスのドラッグ&ドロップで操作手順を覚えさせられる」など、簡単な操作でロボットを構築できます。
画面上の細かい設定も自動的に最適化されるRPAツールがあるため、構築難易度の低い手順を求めている場合は、RPAがおすすめです。
ココがポイント
ITスキルに自信がない場合はRPAツールがおすすめ
4-2.運用のしやすさ
SeleniumとRPAには運用のしやすさにも違いがあり、基本的に範囲が広がれば広がるほどRPAツールの方が運用しやすくなっています。
Seleniumは、プログラミングの知識があれば柔軟にカスタマイズできるのは魅力ですが、組織的に複数人でツールを使うとなると管理が大変になります。場合によっては、担当者の退職や異動でシステムの運用やメンテナンスができなくなる事例も珍しくありません。
ベンダーの提供するRPAツールなら、運用のしやすさにも配慮されているのがポイントです。運用履歴の記録や操作履歴、安全に管理するための仕組みなどが搭載されたRPAツールもあります。
加えて、サポート体制の整ったRPAベンダーを選べば、万が一のときにも安心できるのがメリットです。Seleniumはオープンソースで提供されているツールのため、一般的な「サポート体制」は整っておらず、自身で問題を解決する必要があります。
「自動化ツールは作って終わり」ではなく、その後の運用とメンテナンスが非常に大切なため、運用のしやすさはSeleniumとRPAに大きな違いがあると言えます。
4-3.導入コスト
SeleniumとRPAの違いとして、導入コストの費用感が挙げられます。基本的に、Seleniumはオープンソースソフトウェアとして、無料で利用できるのが特徴です。一方で、RPAツールにも無料な製品はあるものの、ライセンス費用などが発生するケースが一般的です。
上記を比較すると、完全に無料で利用できるSeleniumの方が導入コストは優れているように思えるかもしれません。
しかし、実際には「他社製品との連携に別のツールが必要」「ITスキルを持つ人材が必要」「開発期間等の手間が掛かる」など、人件費を含めて総合的にコストが高額になる事例もあります。
一方で、RPAツールは月額ライセンスが発生するものの、プロが業務分析からシステムの設計、導入サポートまで行ってくれる製品があるのも事実です。SeleniumとRPAのトータルで掛かるコストを比較すると、RPAの方が最終的に安く収まる可能性もあります。
ただし、RPAツールには「デスクトップ型」「クラウド型」「サーバー型」などの違いがある点に注意が必要です。特にサーバー型RPAツールは導入・運用コストが膨大なため、100万円を越す可能性もあります。
ココがポイント
総合的な導入コストを抑えたい場合は、「デスクトップ型」「クラウド型」のRPAツールがおすすめ
5.【具体例】自動化ツールの設定方法
SeleniumとRPAは、それぞれ異なる方法で自動化ツールを設定します。
Seleniumでは、プログラミング言語を用いてコードを記述し、Webブラウザの操作を自動化する仕組みです。たとえば、PythonでSelenium WebDriverを使用する場合、以下のようなコードを記述します。
Google検索結果の一覧を取得する方法
from selenium import webdriver
from selenium.webdriver.common.by import By
from selenium.webdriver.common.keys import Keys
# WebDriverのパスを設定 (Chromeの場合)
driver_path = "path/to/chromedriver" # chromedriverのパスに置き換えてください
driver = webdriver.Chrome(driver_path)
# Googleの検索ページを開く
driver.get("https://www.google.com/")
# 検索キーワードを入力
search_box = driver.find_element(By.NAME, "q")
search_keyword = "Selenium" # 検索キーワード
search_box.send_keys(search_keyword)
search_box.send_keys(Keys.RETURN) # Enterキーを押下
# 検索結果の一覧を取得
search_results = driver.find_elements(By.XPATH, "//div[@class='MjjYud']") # 検索結果の親要素のクラス名で取得
for result in search_results:
title_element = result.find_element(By.TAG_NAME, "h3") # タイトル要素を取得
title = title_element.text
link_element = result.find_element(By.TAG_NAME, "a") # リンク要素を取得
link = link_element.get_attribute("href")
print(f"タイトル: {title}\nリンク: {link}\n")
# ブラウザを閉じる
driver.quit()
以上のコードで、Googleの検索結果から一覧を取得してデータ化できます。なお、Googleの検索結果におけるHTML構造は度々変化しているため、タイミングによっては正しく動作しない可能性がある点にご注意ください。
一方、RPAでは、GUIベースの操作で自動化ツールを作成します。たとえば、Microsoftが無償で提供している「Power Automate Desktop」と呼ばれるRPAツールでは、「サンプルフロー」を活用して一定の操作を簡単に自動化できます。
出典元:Microsoft「無償提供の Power Automate Desktop でフローを自動化しよう!」
ほかにも、画面操作を録画したり、マウスの動きを認識したりして、直感的に操作を自動化できるのがRPAツールの魅力です。ただし、実際にどのような方法で自動化手順を覚えさせるかは、RPAの製品によって異なります。
6.Seleniumを使うメリット・デメリット
Seleniumにはメリット・デメリットがあり、場合によってはRPAツールの方が導入に適している可能性もあります。
ここでは、Seleniumを使うメリット・デメリットについて、それぞれの理由とともに解説します。
6-1.メリット
Seleniumを使うメリットは以下のとおりです。
- 無料で利用できる
- さまざまなWebブラウザに対応できる
- 多くのユーザーに活用されており、サンプルコードを見つけやすい
- 柔軟にカスタマイズできる
SeleniumはRPAと違ってオープンソースで提供されているソフトウェアです。利用料金は掛からず、原則として無料で活用できます。また、Microsoft EdgeやGoogle Chromeなど、主要なブラウザエンジンに対応しているのも魅力です。
過去さまざまな開発者が触れてきた実績があり、多くのユーザーに活用されている背景から、サンプルコードを見つけやすいメリットがあります。
柔軟にカスタマイズできる点も含めて、Seleniumを使えば導入コストを掛けずにWeb上の定型業務を一部自動化できるのもメリットです。
6-2.デメリット
Seleniumを使うデメリットは以下のとおりです。
- プログラミングの知識が必要
- Webブラウザの操作しか自動化できない
- WebのUIが少しでも変更されると、メンテナンスが必要になる
- Selenium公式には日本語の問い合わせ窓口がない
Seleniumは基本的にプログラミングで調整する必要があります。環境構築に手間が掛かる場合は導入・運用に大きな時間が掛かってしまうのも事実です。また、WebのUIが少しでも変更されると、再度調整が必要になるなど安定性に欠ける面も見られます。
ほかにも、原則としてRPAとは違いSeleniumはWebブラウザにしか対応していません。RPAツールには自社システムと別ソフトウェアをシームレスに転記・連携できる製品も登場しており、幅広い業務の自動化に有効です。
SeleniumはWebブラウザ上の作業しか自動化できず、オンプレミス上で動くソフトのテストチェックなどは行えません。ほかにも、Selenium公式には日本語の問い合わせ窓口がないなど、サポート体制が整っていないのも課題です。
オープンソースソフトウェアのためサポート体制がないのは仕方ない面もあるものの、プログラミング知識が求められる点も相まって、自身で問題を解決していく努力が求められます。
7.業務の自動化はRPA制作サービスの利用がおすすめ!
Seleniumは無料で利用できる点が魅力ですが、プログラミングの知識が必要なため、導入のハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。専門知識が求められるほか、運用後のメンテナンスも手間が掛かる点が課題です。
そこで、Seleniumの代わりにおすすめなのがRPAツールの制作サービスです。
たとえば、オーダーメイドでRPAツールを制作するサービス「RaBit」では、プロが業務の定義からツールの設計・開発・導入・運用サポートまで一気通貫で行います。お客様は自動化したい作業をお伝えいただくのみで、定型業務の自動化が可能です。
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