近年、さまざまな業界で人手不足が叫ばれるなか、業務効率化を実現するツールとして「RPA」が注目を集めています。また、保育業界を取り巻く環境も大きく変化しており、事務作業を始めとする負担を軽減するため、「RPA」を導入するケースも珍しくありません。
特に行政でもRPAの導入は進んでおり、保育園の受付業務に掛かる負担を、年間2,000時間ほど削減した事例も存在します。
この記事では、保育現場の業務負担に頭を悩ませている方へ向けて、保育業界の現状と課題から「RPA」のメリットについてご紹介します。保育業界で活用できるRPAの業務例についても触れていますので、あわせてご参照ください。
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1.保育業界の現状と課題
子どもたちの成長を支える重要な役割を持つ保育業界では、さまざまな課題を抱えています。少子化が進む一方で待機児童問題が深刻化しており、保育士の不足や労働環境の悪化、安全管理等の負担が増加しているのも事実です。
ここでは、RPAが保育業界に求められる背景について、保育業界の現状と課題を解説します。
1-1.保育士が不足している
保育業界で業務負担軽減にRPAツールが求められる背景に、保育士人員の不足が挙げられます。厚生労働省の「保育士の需給見通し」によると、平成29年度末時点では約7.4万人もの保育士が人員として不足しているとされています。
平成29年度末では約46万人もの人員が求められているにもかかわらず、離職率等を考慮した計上では38.6万人と大幅に人手が足りていません。
また、こども家庭庁の調べによると、令和5年の保育士有効求人倍率は「3.54」と全職種に比べて高い推移です。
有効求人倍率とは「仕事の数(有効求人数)/働きたい人の数(有効求職者数)」を割り出した数値で、端的に言えば1より高ければ高いほど、働きたい人の数が足りていない状況を指します。
つまり、令和6年になっても保育士の人手不足問題は解決しておらず、未だに多くの現場で「保育士」の人材を求めているのが現状です。
ココがポイント
保育士の人材不足問題は未だに解決されていない
1-2.保育士の労働環境が過酷
保育士の労働環境は長時間労働や休日出勤、精神的なストレスなど非常に過酷です。保育士は子どもたちの安全確保や保育計画の作成、保護者対応など、多岐にわたる業務を担っています。
子どもの怪我やトラブル、保護者からの要望やクレーム対応はもちろん、事務的な仕事を含めて作業負担が大きく、希望の行くワークライフバランスを実現できないシーンも珍しくありません。
そのため、保育士は各業界でも離職率が高く、人材の定着が難しくなっています。
1-3.安全管理に求められることが増えている
近年、保育施設における安全管理の重要性が高まっています。子どもたちの安全を守ることは保育施設の最優先事項とも言え、社会的な責任が大きいのも事実です。
たとえば、園児の登下校時の安全確保や送迎の対応、施設内の安全点検や感染症対策など、さまざまな取り組みが求められます。そのため、保育士の負担は増加傾向にあり、より効率的な安全管理体制の構築が求められています。
しかし、そのような子どもを守る責任が、保育士の人手不足を生み出している現状にもつながっています。厚生労働省の調べでは、保育士の資格を持っているにも関わらず保育士職種を希望しない人(潜在保育士)が48.5%と半数近くに登っているのが現状です。
保育士職を拒んだ約40%は、責任の重さや事故への不安を理由として挙げており、子どもの安全管理や責任を重要視しているが故の回答が多く集まっていました。
1-4.ITツールの導入が遅れている
保育業界でよく見られる課題として、ほかの業界と比べてITツールの導入が遅れている傾向にあるのも問題のひとつです。ITツールの導入による費用対効果が見えにくかったり、ITスキルを持つ人材が不足していたりするため、未だに紙媒体で書類を作成する事例も見られます。
なかには、各種記録を手書きで行っていたり、業務連絡や通知を紙媒体で行っていたりと、業務効率化が進んでいない保育園も珍しくありません。
特に、事務作業を紙媒体で行うのは業務効率を引き下げる要因のひとつです。すべてをペーパーレス化するべきとは限らないものの、情報共有や各種通知をITツールによって代替することで、さまざまな業務効率化の恩恵を受けられます。
そこで、さまざまな定型業務を自動化できる「RPA」を導入する保育園が登場しています。
2.RPAは保育業界の課題を解決する強い味方!
RPAとは、これまで人間が行ってきたパソコン上のさまざまな事務作業を効率化するツールです。特に繰り返し行う定型業務を自動化するのに優れており、従来は10時間掛かっていた作業も、ボタンひとつ押すだけで作業を終わらせられます。
また、連絡帳やお便り配信、園児の情報管理と言ったICTツールとはまったく異なる仕組みで、保護者と共有するようなシステムでもありません。内部で手軽に導入しやすいため、近年さまざまな業界で導入が進んでおり、保育業界でもRPAの活用が期待されているのも事実です。
ここでは、保育園にRPAの導入を検討されている方へ、RPAの基礎概要について解説します。
2-1.RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、ソフトウェアロボットを活用して、業務を自動化する技術を指します。具体的には、パソコンのマウス移動やクリック、ドラッグ&ドロップや文字入力など、人間が行うさまざまなパソコン操作を自動的に行う技術です。
事前に設定した通りに作業を繰り返すため、さまざまな繰り返し業務を自動化できます。
そのため、データの入力や抽出、ファイル転送といった人間が行うパソコン操作をほとんど自動的に行えます。定型的な作業を自動化できるだけでなく、「正しく動作を繰り返す」ため、作業内容にもミスはほとんど発生しません。
ボタンひとつで従来行っていた定型作業を自動化できるため、業務効率化やコスト削減、ヒューマンエラー防止などさまざまな効果を発揮できるのがRPAツールの特長です。
2-2.RPAが得意な作業
RPAは、主に以下のような作業の自動化に長けています。
- データ入力:ExcelやWebサイトへのデータ入力を自動化
- データ抽出:Webサイトやシステムから必要なデータを抽出
- ファイル転送:ファイルの移動やコピーを自動化
- レポート作成:定型的なレポート作成を自動化
- システム連携:複数のシステム間でのデータ連携を自動化
たとえば、勤怠管理ソフトやExcelに記載された保育士の出勤時間をもとに、RPAを活用して給与計算ソフトの操作を自動化、給与の振込から明細発行・メール送信まで自動化が可能です。
ほかに、従業員や保護者への情報共有作業も容易に行えます。テンプレートとなる文章を書くだけで、LINEなどのSNSやメールアドレスへ自動的に内容を送付するフローもRPA化が可能です。
また、文章をもとにプリンター印刷の工程まで自動化できるなど、保育業界で頻繁に行われる事務作業をRPAによって効率化できます。単純作業から開放され、より重要な業務に集中しやすくなるため、RPAの導入で保育士のワークライフバランスを改善しやすいのもポイントです。
3.RPAを保育施設で導入するメリット
RPAを保育施設に導入すれば、以下のようなメリットがあります。
- 保育士の働き方を改善できる
- パソコンが得意でなくても使いこなせる
- 保育の質を向上できる
ここでは、RPAの導入が保育施設にもたらすメリットについてそれぞれ解説します。
3-1.保育士の働き方を改善できる
RPAを活用すれば、データ入力・転記などの単純な作業を効率化できるため、保育士の業務負担を軽減できるのがメリットです。これまで手作業で行っていた事務処理をRPA化すれば、保育士は子どもと接する時間を増やしたり、保育の質向上に集中したりできます。
たとえば、保育料やシフト調整における請求書処理・資料作成などの事務作業も、RPAによって自動化が可能です。また、保育記録の作成から連絡帳、出席簿などもRPAとICTツールを組み合わせることで、必要なデータを入力するだけで自動的に各種調整・情報共有を行えます。
3-2.パソコンが得意でなくても使いこなせる
保育業界のなかには、パソコン操作が不得意な保育士の方も少なくありません。RPAツールであれば、一度環境を構築するだけで、ボタンひとつで業務を自動化できるのがメリットです。
また、RPAツールにはプログラミングの知識がなくとも操作できるソフトウェアが登場しています。直感的に操作できるツールや豊富なテンプレートによって、RPAのシステムを有効活用しやすいのがポイントです。
なかにはドラッグ&ドロップの操作だけで業務のRPA化を行えるなど、パソコン操作が苦手な方でもスムーズに導入できます。一度環境を整えればITスキルも不要なため、自信がない保育士でもRPAを導入しやすいのは魅力です。
3-3.保育の質を向上できる
RPA導入による業務効率化は、保育の質向上にもつながります。保育士が事務作業に追われる時間を削減すれば、子ども一人ひとりと向き合う時間を増やせるため、個別のニーズに対応した丁寧な保育を実現できるのがメリットです。
そのため、子どもの保育や健康状態などを記録しやすくなるほか、事務作業等の残業を減らす効果も期待できます。
また、単純ながらも負担になりがちな事務作業をRPA化することで、保育士自身のモチベーション向上にもつながります。過度な業務負担を減らしてコア業務の保育に注力しやすくなるため、保育士が子どもたちの成長を的確にサポートできるのはRPA導入の大きなメリットです。
4.保育施設でRPAの導入に適した業務
保育施設では、さまざまな事務作業の業務にRPAを導入できます。RPAの導入に適している代表的な保育施設の業務は以下のとおりです。
- 職員のシフト管理・勤怠管理
- 保育計画書や保育日誌の作成
- 給食の発注や経理
- 行政や役所への提出書類の作成
ここでは、RPA導入に適した保育施設における業務を具体的に紹介します。
4-1.職員のシフト管理・勤怠管理
職員のシフト管理や勤怠管理は、RPAの導入効果が高い業務です。Excelや勤怠管理システムへのデータ入力・集計・給与計算など、定型的な作業の多くはRPAツールによって自動化しやすい魅力があります。
たとえば、職員の出勤・退勤データを自動で集計し、給与計算システムに連携させることで、給与計算担当者の作業時間を大幅に削減できます。なかには給与の振込や明細発行などもRPAで自動化した事例もあり、保育施設の事務的な業務負担を大幅に軽減できるのがポイントです。
RPA導入により、人為的なミスを減らして、正確な勤怠管理を実現できます。
4-2.保育計画書や保育日誌の作成
保育計画書や保育日誌の作成も、RPAで効率化できる業務です。書類作成には定型的なフォーマットへの入力作業や、過去のデータの参照などが多く含まれています。
RPAツールを活用すれば、子どもの年齢や発達段階に応じた保育計画書のテンプレートをもとに、必要な事項の自動入力で書類作成に掛かる時間を短縮できます。
最新の情報へ一括更新もできるなど、書類作成に費やす時間を減らしつつ、データの共有などもやりやすくなるため、引き継ぎ等の負担も減らせるのがポイントです。
4-3.給食の発注や経理
保育園における給食の発注・経理等も、RPAで自動化できる業務です。発注書の作成や請求書の処理、入金確認などの定型的な作業のほとんどを、RPAによって自動化できます。
たとえば、園児の出席状況をもとに給食の必要数を自動で計算し、発注システムにデータを送信といったフローも自動化できます。発注業務を効率化できるため、保育園にRPAを導入すれば、担当者の負担を軽減しつつ業務の正確性を向上させられるのがメリットです。
4-4.行政や役所への提出書類の作成
行政や役所への提出書類の作成は、複雑で時間のかかる作業です。さまざまな書類を作成し、必要事項を正確に入力する手間がある一方で、その作業内容はほとんど代わりありません。
児童手当の申請書類や保育施設の運営に関する報告書など、保育施設では多くの書類を作成する必要があります。そこでRPAを活用すれば、多くの書類作成を自動化して、担当者の負担を軽減できるのがメリットです。
特に、作業手順や記入項目が固定化された行政手続きにおいて、RPAならさまざまな入力を効率化することが可能です。
5.RPA導入の流れ
RPAを保育施設に導入する際の流れは、以下のようなフローが一般的です。
- 現状分析:現状の業務フローを分析して、定型的に発生する業務とRPAの導入に適した作業を特定
- RPAツール選定:保育施設のニーズに見合ったRPAツールを選定
- シナリオ作成:繰り返し行う作業内容を実行する「シナリオ(指示書)」を作成
- テスト運用:RPAツールで実際に作業が自動化できているかテスト
- 本稼働:テスト運用で問題がなければRPAを本稼働
- 効果測定:導入後にどの程度の業務負担を軽減できたかチェック
RPAツールによっては、導入支援サービスを提供しているベンダーもあります。「どのような作業を自動化したいか」「そもそもRPAツールの導入が適しているのか」といった段階から相談を受けてくれるベンダーも存在するため、開発リソースのほとんどを外注できるのもポイントです。
6.RPAの導入なら「RaBit」にご相談ください
RPAを保育施設に導入すれば、さまざまな事務手続きを効率化できます。また、書類作成や給与・給食等の発注・経理管理まで幅広い業務を自動化できるのが特徴です。
とはいえ、保育施設にRPAツールを導入しようと検討している方のなかには、「うまく導入できるか分からない」「正しく設定できるITリソースがない」と不安な気持ちを抱えている方もいるかもしれません。
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