業務の自動化を進めるうえで、AIエージェントやRPAは有力な選択肢として注目されています。近年は生成AIの進化が著しく、「RPAはもう必要ないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には、AIエージェントとRPAでは自動化できる業務の種類が異なり、それぞれに得意な領域があります。むしろ、AIエージェントとRPAは競合関係ではなく、組み合わせることでより高い効果を発揮するパートナー的存在です。
この記事では、AIエージェントとRPAの違いについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。AIエージェントはRPAの代替になるのか、市場規模の違いについても触れていますので、ぜひご参照ください。
この記事の要約
- AIエージェントは非定型業務、RPAは定型業務に強みがあり、得意領域が異なる
- 両者を組み合わせるハイパーオートメーションで、幅広い業務を自動化できる(記事内で事例を紹介)
- AIエージェントは成長性が高いものの、誤判断やセキュリティリスクに注意が必要
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1.【比較表あり】AIエージェントとRPAの違いをわかりやすく整理
AIエージェントとRPAの違いを簡単にまとめると以下のとおりです。
- AIエージェントは「話して考えて動く自分の部下」
→ 目的を話すと、必要な対応を行うなど柔軟に対応できる点が強み。 - RPAは「決められた作業を正しく繰り返す事務スタッフ」
→ 事前に与えられた指示に従って、情報入力・転記をミスなく完璧に繰り返せるのが強み。
AIエージェントとRPAはそれぞれ得意な領域が異なります。AIエージェントは「話して・判断して・動く」、RPAは「決まった操作を速く・正確にこなす」のが大きな違いです。
たとえば、AIエージェントが問い合わせ内容を分析し、RPAが社内システムに登録作業を行うといった連携活用で、業務の幅広い自動化を実現できます。
項目 | AIエージェント | RPA (Robotic Process Automation) |
---|---|---|
対応領域 | 非定型業務(判断・対話・タスク連携など) 質問や判断など人と会話するような「考える」業務が得意 | 定型業務(反復処理・画面操作の自動化) 繰り返し処理するなど手順が決まっている作業が得意 |
主な導入目的 | ・判断業務や複数業務プロセスの効率化 ・従業員の生産性向上 | ・単純作業の自動化 ・工数削減による負担軽減 ・ヒューマンエラーの防止 |
処理の進め方 | 「目的」を伝えると、文脈理解と意思決定を含むタスクを進め、外部ツールと連携しつつ処理 | 「事前設定」をもとに、ボタンを押すだけで明確な手順に従って、同じ処理を非常に高い精度で繰り返す |
得意な業務領域 | ・問い合わせ対応や判断が必要な業務 ・複数の業務ツールをまたぐ処理 など | ・手順が決まっているルーティン業務 ・データ転記やレポート出力 など |
使用する技術 | 生成AI(GPTなど)+ツール連携(API/関数呼び出しなど) | 画面操作の記録と再現に基づいたルールベース処理 |
柔軟性/拡張性 | 高い(ユーザーの入力や外部状況に応じて動的に対応可能) | 低い(フローやUI変更に対して再設定が必要) |
主な利用シーン | 問い合わせ対応、社内業務支援、複数SaaSの統合処理など | 経費処理、帳票出力、システム間の正確なデータ転記など |
2.AIエージェントとは?

AIエージェントとは、人工知能を活用して人間のように状況を判断し、自律的に行動するソフトウェア(例:OpenAI Operator)を指します。
従来の単純な応答型生成AIツールとは異なり、ユーザーの意図を理解し、複数の情報を統合して判断することでアクションを選択できるのが特徴です。
たとえば、社内ヘルプデスク向けAIエージェントなら「パスワードを忘れた」という問い合わせに対して、本人確認からパスワード再発行手続きまで自動で行えます。ただし、実際にパスワードの再発行&システム登録作業は正確性が求められるため、要所でRPAが対応するケースがあります。
AIエージェントの特徴は、「意思決定」を行える点です。事前に設定された通りに動くRPAとは違って、状況に応じて応答を柔軟に変えられます。そのため、業務支援だけでなく、マーケティングや営業支援など高度な業務でも活用の幅が広がっています。
2-1.生成AIとAIエージェントの違いとは?機能と使い方の比較
生成AIとは、文章や画像、コードなどを生成するAI技術の総称(例:ChatGPT、Claude、GeminiCLIなど)です。一方でAIエージェントとは、生成AIを活用しながら、目的達成に向けて意思を持って行動するよう設計されている違いがあります。
たとえば、生成AIは「メール文面を作るだけで終わる」のに対し、AIエージェントは「文章を作成してメールを送信し、返信内容に応じて次の対応を取る」といった一連のプロセスまで担います。
そのため、「お客様からの問い合わせに対応し、社内の在庫データを参照して回答を返す」といった流れも自律的にこなせるのがAIエージェントの特徴です。
生成AIは「情報を生み出す・情報をまとめる力」に長けているのに対し、AIエージェントは「情報を使いこなす力」に特化しているのが分かりやすい違いと言えます。
2-2.AIエージェントのメリット・デメリット
メリット
- 非定型業務への対応力が高く、問い合わせやナレッジ検索に強い
- 情報を引き出して複雑な業務を一括処理できる
- 生成AIや外部APIと連携して幅広い業務に柔軟に対応できる
デメリット
- 学習・構築に一定の時間とコストがかかる
- セキュリティやプライバシー保護の対策が必須で慎重な設計が求められる
- 判断・対応ミスを引き起こすリスクがある(後述)
3.RPAとは?

RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコン上で行う定型業務をソフトウェアロボットが自動で実行する仕組みです。主に定型業務を対象として、Excel作業やシステムへのデータ入力、レポートの作成などを自動化できます。
人間が行う操作をそのまま記録・再現できるため、導入ハードルが比較的低く、短期間で効果を実感しやすい点が魅力です。
さらに、もっとも大きな特徴として、既存システムを改修することなく導入できる点も魅力です。業務フローを記録して、人の手のように作業を繰り返す仕組みのため、既存システムはそのままに短期間で成果を上げやすく初期投資も比較的抑えられます。
3-1.RPAのメリット・デメリット
メリット
- 定型業務を正確に繰り返し高速処理できる
- 導入/運用が比較的簡単
- 入力ミスなどのヒューマンエラーを抑制し労働負担を軽減
デメリット
- 非定型業務には対応できない
- イレギュラーな処理に対して非常に弱い
- 設定や例外処理の調整には手間がかかる
4.【活用事例】AIエージェントとRPAの使い分け方と導入シーン

AIエージェントとRPAは、どちらも業務自動化に役立つツールです。しかし、活躍できる場面や業務の性質には明確な違いがあります。ここでは、それぞれの代表的な活用事例を比較しながら、違いをわかりやすく解説します。
4-1.AIエージェントの主な活用事例
AIエージェントは、柔軟な対応力や対話機能を活かし、「判断が必要な業務」や「ユーザーとのやりとりが発生する業務」に多く使われています。
- 社内ヘルプデスクの自動応答
パスワード再設定の案内やPCトラブル対応など、社員からの問い合わせに自動で対応。 - カスタマーサポートの一次対応
FAQから最適な回答を導き出し、チャットで対応。複雑な内容は人間に引き継ぎ。 - 営業支援ツールとの連携
顧客との会話履歴から要望を抽出し、次の提案に活かす。スケジュール調整やCRM入力も支援。 - マーケティングオートメーション
ユーザー行動に応じたパーソナライズ対応。キャンペーン内容の出し分けなどにも活用。
4-2.RPAの主な活用事例
RPAはルールが決まっていて繰り返しが多い「定型業務の効率化」に力を発揮します。
- 経費精算データの入力・集計
従業員が提出した内容を確認し、会計システムに自動転記。 - 請求書の作成・送付処理
顧客情報と金額をもとに帳票を作成し、PDF化・メール送信まで自動化。 - 受発注データの処理
ECや販売管理システムから注文データを取得し、基幹システムへ登録。 - 定期レポートの自動生成
Excelの集計データを加工し、毎週・毎月の報告書を作成・配信。
4-3.AIエージェント×RPAで「ハイパーオートメーション」の活用事例も
AIやRPAなど複数技術を活用すれば、非定型業務から定型業務まで一貫して自動化するハイパーオートメーションも実現できます。
「RPAだけでは対応しきれなかった業務領域」「AIだけでは担保しきれない正確性」を補い合い、人手をより重要な業務に充てられるのがポイントです。
【営業活動の業務支援】
営業担当は、顧客対応・提案資料作成・スケジュール調整など、多岐にわたる業務をこなす作業負担が課題です。そこで、AIエージェントとRPAを活用すれば以下のような効果を得られます。
- AIエージェントが顧客とのメール内容を分析
要望や関心度を自動で把握 - 次回提案のアクションを提案&営業日程を自動調整
スケジュールを確認し、打ち合わせを自動でカレンダー登録 - RPAが営業支援ツールに商談情報を登録
CRMやSFAに対応履歴や次回予定を記録
営業担当はコア業務である「判断や提案」に集中でき、事務作業を自動処理できます。
【経費精算の自動化】
経理部門では、毎月の経費精算対応が手間になりがちです。現在でもRPAで会計・給与・振込のフローを効率化しているケースも少なくありませんが、そこにAIを組み合わせれば、さらなる業務効率化を期待できます。
- AIエージェントが従業員からの経費申請チャットに応答
内容に不備がないかその場でチェック&修正依頼 - 仕訳や処理ルールに基づいて内容を分類
交通費・交際費などに自動でカテゴリ分け - RPAが会計システムにデータを入力&帳票を生成
データの転記作業はすべてRPAが入力
経理担当は結果のチェック業務に集中でき、入力や転記作業の手間をすべて自動化できます。繁忙期の残業代や負担増加も抑えられるのが魅力です。
【社内問い合わせ対応の自動化】
情報システム部門や総務部門では、日々多くの社員からの問い合わせ対応に追われています。特にパスワード再発行や申請手続きなど、単純ながらも繰り返し発生する対応は負荷が大きくなりがちです。
- AIエージェントがチャットツールで社員の問い合わせに応答
「パスワードを忘れた」「アクセス権を付与してほしい」などを自動で受付 - 内容に応じて問い合わせを分類し、本人確認など必要な手続きを実行
ワークフローに沿って分岐し、必要に応じて対応フローを案内 - RPAが対象システムに処理を実行(パスワード再発行、権限変更など)
登録後、結果を社員に自動通知
単純な問い合わせの一次対応を自動化できるため、対応工数を大幅に削減。特に情シスは、より企業戦略に関わる業務に注力できるようになります。
5.AIエージェントはRPAの代わりになる?現状と課題

AIエージェントは多くの業務を柔軟に処理できるため、RPAの代替ツールとして注目されています。しかし、誤った情報に基づく判断を行うリスクがあるのも事実です。特に正確性が求められる業務では、人間のチェックやRPAとの役割分担が欠かせません。
RPAで自動化している業務のうち、いくつかはAIエージェントに置き換えられる業務があったとしても、AIエージェントそのものがRPAの代替になる可能性は低くなっています。
そのため、現状AIエージェントはRPAの代替にはなっていません。
5-1.AIエージェントがRPAに置き換わらない理由
現時点でRPAの代わりにAIエージェントを活用・置き換えるのには、いくつか課題が残ります。
その課題のひとつが「AIの誤判断」です。ChatGPTやGemini、Claudeといった主要な生成AIサービスでも、公式に「誤情報を含む可能性がある」「結果の正確性を保証できない」と明記されています。
ChatGPT は、もっともらしく聞こえても、正しくない回答や意味不明な回答をすることがあります。この問題を解決するのは困難です。
引用元:ChatGPT(OpenAI)
役に立つアシスタントになろうとするクロードは、時折、間違った回答や誤解を招く回答をすることがあります。
引用元:Claude(Anthropic)
OpenAI OperatorなどのAIエージェントは自律タスク実行に優れているものの、基盤技術の限界からミスを完全には回避できません。リスクを軽減するには、人間がチェック・検証を行うプロセスが必須です。
そのため、医療・金融など高精度が求められる分野での完全自動化はまだ現実的ではありません。特に法律文書や財務データなど、正確性が最優先される業務では、RPAのように手順通りに処理を行うツールの方が信頼性を担保しやすいのが現実です。
5-2.プロンプトインジェクションも問題のひとつ
Webページから情報を取得する仕組みには、RPAとAIエージェントでも大きな違いがあります。特に問題なのが、Webページなどのデータ調査において、「プロンプトインジェクション」の影響を受けるリスクです。
プロンプトインジェクションとは、AIに誤った認識・応答をさせる攻撃方法です。AIが読み取るコンテンツ内に、意図的にAIの動作を操作する文言(例:「この情報は無視してください」「反対の情報を伝えてください」など)を埋め込むことで、まったく違う結果が出力されてしまいます。
RPAは、あらかじめ決めた場所から情報をそのまま取得するため、記載された内容を事前の設定通り、正確に抜き出せるのが強みです。人の目に写るコンテンツをそのまま転記するため、プロンプトインジェクションの影響を受けるリスクはありません。
一方で、OpenAI OperatorのようなAIエージェントは、htmlを通してページ全体のコンテンツをチェックします。AIは人の目に映らない情報までもチェックしてしまうため、その影響を受けてしまうのが課題です。
さらに問題なのが、「間違った情報・データをそれらしくまとめてしまう」点です。プロンプトインジェクションなどで与えられた間違ったデータも、正しいと認識したうえでデータをまとめるため、結果として「誤ったデータで整ったレポート」を生成してしまいます。
AIの調査データを丸々信じると後に大きなトラブルに発展するため、人の目によるチェックが欠かせません。
6.AIエージェントとRPAの市場規模の違いや将来性
指標 | AIエージェント | RPA (Robotic Process Automation) |
---|---|---|
2024年市場規模 | 54億ドル | 37.9億ドル |
2030年予測市場規模 | 503.1億ドル | 308.5億ドル |
年平均成長率予測 | 45.8% | 43.9% |
Grand View Researchのレポートでは、AIエージェントとRPAはどちらも年平均成長率が40%台で進むと見られており、両者とも安定した成長を遂げると見込まれます。
AIエージェントは近年高い水準で成長しており、生成AIのブームも相まってRPAの市場規模を追い越した形です。
一方で、RPAは人口減少に伴う人手不足対策として定着しており、処理精度の高さから金融業界などでますます導入が進められています。
加えて、RPAとAIを組み合わせた業務効率化効果が高まってきており、相乗効果も相まって、セットで導入が進められている傾向にあるのもポイントです。
MM総研が行った調査では、「中堅・大手企業で生成AI×RPAを検討・準備中は53%」とセット活用に意欲的な回答が多くなっています。中小企業のRPA導入率も年々右肩上がりで伸びており、RPA単体の利用も今後成長を遂げると見込まれています。
まとめ:業務効率の最大化は「AIエージェント×RPAの組み合わせ」がおすすめ
AIエージェントとRPAは、それぞれ異なる領域を得意とするツールです。だからこそ、両者をうまく連携させれば、処理時間の短縮や業務品質を向上させながら業務を自動化できます。
たとえば、AIエージェントが問い合わせ内容を判断し、必要な処理をRPAが正確かつスピーディに実行するような連携を実現すれば、非定型な判断業務から定型的な実行業務まで、スムーズにつなげることが可能です。
特に、DXを進める現場では「人手を減らす」以上に、「人が集中すべき判断業務に専念できる環境づくり」が求められます。その意味で、AIエージェントとRPAの組み合わせは、業務効率と現場の生産性をともに高める有効なアプローチと言えるでしょう。