RPAの導入を成功させるためには、要件定義書の作成が欠かせません。言い換えれば、要件定義書の段階でしっかりと取り組まなければ、RPAを導入するどころか、運用効果を得られない可能性もあります。
とはいえ、RPAの要件定義にはいくつか難しいポイントがあります。初めて業務をRPA化するときは、期待通りの働きをロボットに行わせるためにも、要件定義書のポイントについて把握しておくことが大切です。
この記事では、RPAの要件定義書とは何か、作成方法や作成時のポイントを具体的に解説します。「RPAの要件定義書を作成するのが初めてで不安」という方へ向けて、プロがオーダーメイドでサポートするサービスについても解説していますので、あわせてご参照ください。
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1.RPAの要件定義書とは
RPAの要件定義書とは、ロボットがどのように業務を自動化するのか、一連の流れを詳細に記述した設計書です。実際にロボットを稼働させる手順の「作業手順書(シナリオ)」とは異なります。
RPAの要件定義書とは、RPA開発における「設計図」です。具体的には、「RPAでどのような業務を自動化するのか」「実際にRPAが稼働するときに予想されるロボットの作業手順」を具現化する作業が含まれます。
ロボットで何をどのように行うべきかを明確に理解すれば、プロジェクト関係者間での認識のズレを防ぎ、円滑なコミュニケーションを促進してRPAの導入を成功させやすくなるのがポイントです。
プロジェクト途中で担当者が入れ替わっても、要件定義書がしっかりと固まっていれば、何のためにどのようなツールを制作するのかスムーズな引き継ぎができます。
1-1.要件定義の2つの要素
RPAの要件定義は、「機能要件」と「非機能要件」の2つの側面から構成されます。機能要件は、「エクセルを開く」「特定のデータを抽出する」「計算結果を別のシステムに入力する」といった、RPAが実行すべき具体的なタスクや動作を定義する作業です。
一方で非機能要件は、「処理速度」「セキュリティレベル」「エラー発生時の対応」など、RPAの性能や信頼性、使いやすさに関する要求を定義します。2つの要素をバランスよく含めた要件定義書を制作すれば、実用的かつ高品質なRPAツールを導入しやすくなります。
1-2.要求定義との違い
要件定義と混同されやすい「要求定義」は、RPA導入の検討段階で行われる作業です。
要求定義は現場担当者や経営層など、RPAの利用者側が抱える課題や要望をまとめたものであり、「業務効率を向上させたい」「人的ミスを削減したい」といった抽象的なニーズを明確にするプロセスを指します。
一方で要件定義は、要求定義を元にして具体的にシステムをどう稼働させるか、システム要件へ落とし込む作業が要求定義との違いです。
2.RPAの要件定義書の作成手順4ステップ
RPAの要件定義書の作成は、以下の4つのステップを踏むことで、よりスムーズに進められます。
- 目的を明確にする
- 対象業務のプロセスを可視化する
- 運用に関する要件を決める
- 要件定義を文書化する
ここでは、RPAの要件定義書を作成する方へ向けて、各ステップごとの手順を解説します。
2-1.ステップ1:目的を明確にする
はじめに、RPAの導入目的を明確にして要件定義書を制作することが大切です。なぜRPAを導入するのか、導入目的や求めていることを具体的に定量化します。
たとえば、「残業時間を月20時間削減する」「処理件数を1日あたり100件から150件に増やす」「年間100万円のコスト削減を目指す」など、具体的な数値の目標設定が重要です。
数値目標を設定すれば、導入効果を測定しやすくなるため、RPAの導入後にPDCAを回して業務効率を推し進めやすくなります。
目的があやふやな状態で要件定義書を作成してしまうと、導入効果を実感しにくくなり、将来的に適用範囲を広げた業務効率化を進めにくくなってしまう点に注意が必要です。
2-2.ステップ2:対象業務のプロセスを可視化する
RPAの要件定義書では、現状の作業手順を洗い出し、その業務を初めて見る人が分かるレベルまでプロセスを書き起こします。「利用するシステム名」「サイト名」「ファイル名」「実際の手順」など詳細まで可視化します。
そのうえで、作業手順のうちどの部分を自動化するか決定する作業が大切です。たとえば、自動化に向いている作業として「データ入力」「分析」「PDF生成」「定型文でのメール送信」など、RPA化できる業務プロセスを洗い出します。
また、この際に既存業務を見直すのもポイントです。必要に応じて自動化に適した新しい業務プロセスを構築したり、非効率な業務のフローを改善するだけで、RPAの導入効果を最大化しやすくなります。
ココがポイント
既存業務を振り返るだけで、RPAの導入前に業務を効率化できる事例もある
2-3.ステップ3:運用に関する要件を決める
RPAの要件定義書を作成するときは、安定稼働と効率的な運用を実現するため、運用に関する要件も定義します。想定されるエラーや例外処理が起きたときの対応、セキュリティ対策やメンテナンス体制など、運用に関する要件はさまざまです。
また、RPAを利用する担当者の教育計画など、事前に検討すべき内容は多岐にわたります。導入後のトラブルを未然に防いでスムーズな運用を実現するためにも、運用に関する要件定義は非常に大切です。
2-4.ステップ4:要件定義を文書化する
最後に、これまで紹介したステップをもとに、要件定義書として文書化します。業務フロー図やデータフロー図、画面遷移図などを活用して、視覚的にわかりやすく情報を整理する作業です。
その際は、専門用語を避けてわかりやすい言葉で記述するのもポイントです。ITスキルに自信のない関係者でもわかりやすい文書を作りやすくなるため、認識のズレがないかを確認しつつ、全員が納得の行く要件定義書を作成しやすくなります。
3.要件定義書を作成するときのポイント
要件定義書を作成するときは、以下の3つのポイントを押さえることで、より高品質なRPAを実現しやすくなります。
- データフロー図も作成する
- ロボットの動きは細かく指定する
- 要件定義書の読み合わせを行う
ここでは、RPAの要件定義書を作成するときのポイントについて解説します。
3-1.データフロー図も作成する
RPAの要件定義書を作成するときは、「データフロー図」もしっかりと制作する必要があります。データフロー図とは、データがどのように入力・処理・出力されるかを視覚的に表現する図表を指します。
たとえば、請求書メールが届いた際に関するデータのフローは以下の通りです。
「請求書メールが届く」→「RPA(自動でダウンロード)」→「RPA(請求書ファイルに保存)」→「RPA(OCR処理)」→「文字データを抽出」→「RPA(検証・加工して出力)」→「RPA(会計システム担当者へのメール)」→「RPA(作業済み保管フォルダへ格納)」
データフロー図を作成すれば、「データの流れの全体像を把握できる」「データの整合性を確保できる」「セキュリティリスクを低減できる」といったメリットが得られます。RPAの処理手順やデータの受け渡し方法を最適化できるため、より効率的かつ安全にRPAを運用できるのがメリットです。
3-2.ロボットの動きは細かく指定する
RPAの要件定義書では、ロボットの動きを細部まで指定する必要があります。人であれば、「メールをダウンロードして◯◯にある△△のファイルに格納して」と伝えるだけで、わざわざ細部まで説明する必要もありません。
一方で、RPAのロボットは同じような説明をされても業務を自動化できません。「メールフォルダを開き、ダウンロードボタンを一度クリックしてからデータをダウンロードして…」と細かい部分まで手順を指定する必要があります。
また、各確認工程の振り返りも大切です。「ファイルを開く」といった指示一つとっても、「ファイルが存在しない場合のエラー処理」「複数のファイルが存在する場合の選択方法」などを細かく定義する必要があります。
ロボットの誤動作を防ぎ、安定した処理を実現するためにも、要件定義書をもとに細かい指示書(シナリオ)作りが欠かせません。
3-3.要件定義書の読み合わせを行う
RPAの要件定義書は、必ず発注者・利用者両方の読み合わせを行うのをおすすめします。要件定義書の作成はシステム開発者側が主導で行うケースが一般的なものの、発注者側の意図やニーズを正確に反映できていないケースが少なくありません。
発注者側の「要求定義」が曖昧なまま開発を進めてしまうと、完成したシステムが当初のニーズを満たしていない事態に陥る事例もあります。認識のズレがシステム開発の最終段階で発覚した場合、修正に多大な時間と費用を要するだけでなく、プロジェクト全体の遅延や、システムの作り直しにつながるリスクがあるのも事実です。
そのため、要件定義書の作成後は「開発者」「発注者・利用者」など関係者全員で内容を確認する読み合わせの実施が大切です。要件定義書の記載内容に誤りがないか、不明点や疑問点を確認して、認識のズレを解消することで後々のトラブルを未然に防止できます。
4.RPAの要件定義書の作成はプロに頼むのがおすすめ
RPAの導入を成功させるためには、要件定義書の作成が不可欠です。しかし、専門知識や経験がない状態から、自社だけで完璧な要件定義書を作成するのは容易ではありません。そのため、RPAの要件定義書を作成するときは、プロに外注してみるのをおすすめします。
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